乳酸菌飲料はなぜ排泄されるのか
前述のように、単純に善玉菌を腸内に送り込んで、菌のバランスを変えようとしても、恒常性に阻まれ、結局は排泄されてしまいます。
生まれた時から一緒に育ってきた腸内細菌たちにとっては、どのような菌も『よそ者』だからです。
もしも、善玉菌が送り込まれる事が腸内やヒトにとって「ウエルカム」な訪問者ならば、排泄などされずに腸内にとどまることができるはずです。
せっかく善玉菌を選んで送り込んだのに、何故排除されるのでしょうか。
送り込まれた善玉菌が排泄されてしまうのは、実は腸内にとってあまり有り難くない相手、存在だからではないでしょうか。
その理由は簡単です。
『送り込まれた善玉菌は、自分の腸内菌と種類が違う』からです。
血液に血液型があるように、同じ種類同士が仲良く共存、あるいは悪玉菌との勢力争いをしている腸内に、別の種類の細菌が入って来るのですから、よそ者は放り出そうとするわけです。
(例えば、内戦が絶えないイラクに、『俺たちが平和にしてやる』と言ってアメリカ軍が大挙して押し寄せたとしても、実際に平和は訪れず、派兵の結果多くのアメリカ兵が犠牲になっている様子に似ています)
ヨーグルトなどに使われる乳酸菌などは、メーカーが機能性と賞味期限が長い種類として選んだものですから、飲む人の腸内にいる細菌とは違う種類の菌なのです。
乳酸菌の製品には、『腸内由来の菌を使用』として販売されている物もありますが、基本的に自分のお腹にいる菌ではないことに変わりはありません。
善玉菌ならば何でもいい、というわけではないのです。
同様に、『○○から発見した新しい乳酸菌!』などと宣伝している健康食品を見かけますが、はたしてその様な珍しい菌が、私たち一般人の腸に必要だろうかと疑問です。
「腸内が善玉菌を求めている」という神話は、考え直さなくてはならないと思います。