乳酸菌生産エキスと酵素
乳酸菌生産物質には『酵素』が含まれているのか、或いは乳酸菌生産物質は酵素なのか、と言う様な質問を受けることがあります。乳酸菌生産物質は酵素ではないし、製造された原液の中に何か別の酵素が入っている可能性もないので、酵素が含有しているか分析を行ったことはありません、と答えています。以下で簡単に説明します。
乳酸菌生産物質は無農薬豆乳が腸内細菌で醗酵する過程で菌が代謝した成分の集まりで、構造上はアミノ酸やペプチド(アミノ酸の集合体)が主体です。この醗酵過程で腸内細菌固有の酵素の働きによって、機能性を有する成分が代謝されると考えています。酵素をひと言で説明しますと、Aという物質に働きかけ、Cという物質に変化させるため、Bという酵素が独立して働きます。私たちの体内で一番最初に消化に係わる酵素はアミラーゼです。唾液の中に含まれるアミラーゼという酵素は、食物中の澱粉を分解して麦芽糖に変換するというたった一つの働きを持っています。
このように、どんな酵素もたった一つの仕事しかできません。ゆえに化学工場と呼ばれる肝臓などの臓器でも、3.000以上もの酵素が3000種類もの成分を分解して他のものに変えるために働いていると言われます。スーパーなどで『酵素パワーのZ』などと、さも強力な汚れの分解洗浄能力があるように宣伝している洗剤が売られていますが、そのZという酵素はたった一つの汚れ成分しか分解できないということを、一般の主婦は何も知らずに買っているのでしょう。Zが複数の酵素の集合体なら別ですが。このフォーラムで学習する皆さんは、ただ酵素と書かれただけで盲目的に洗浄能力を信じるのはやめましょう。
話が逸れました。『遺伝子は人体の設計図、酵素は工具』とも言われます。一般に醗酵という現象は酵素を伴うため、腸内での醗酵過程でも酵素が介在しているのは当然でしょうが、酵素は醗酵を進めるための触媒、ただの道具であり、酵素そのものに人体への機能性を求める意味はありません。
性質上、乳酸菌生産物質の原液の中に酵素が入っている可能性はありません。何故かと言いますと、ほとんどの酵素はたんぱく質でできており、三次元的な立体構造を持つため、熱や酸に非常に弱い性質があります。ですので、もし乳酸菌生産物質に何らかの酵素が残っていたとしても、酵素は熱に弱いため乳酸菌生産物質製造時の殺菌作業によって失活(活性を失う事)します。ですから、工具である酵素そのものに機能を求める意味もないというわけです。
巷には●●玄米酵素などのように、『酵素=菌=体に良い』と誤った解釈をイメージさせるような宣伝をしている製品も見受けられますが、これは完全に間違いです。このような酵素処理をした製品も、基本的には材料の植物を微生物ないしは何かの酵素を用いて分解または発酵させて、乳酸菌生産物質同様に作り出された分解生成物の成分の機能性をうたったものなのです。製品名に酵素と謳(うた)っている製品ならば、なんという種類の酵素が含まれているのか表示するべきですし、酵素の意味を知らない消費者に、とにかく酵素が体に良いものだと、間違った解釈をさせて商品を売ろうとしている製品が目立ちます。
乳酸菌生産物質の機能性は、このような失活した酵素の残骸のもつ情報が、腸管免疫機構を刺激することによって生まれる可能性は高いのですが、結論としては酵素そのものではないため、さまざまな機能性があっても、それは酵素の働きとは考えていないわけです。また、いわゆる「怪しげな御用医学者」の胡散臭い表現に基づいた健康食品も多く、酵素の働きとして先端科学で証明された健康食品は市場に見当たりません。