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腸管の機能回復と脂肪細胞

■メタボには腸管の機能回復が必要
前項(3)のアドレナリンの効きを良くする(アディポネクチンの分泌を促進する)方法こそが、脂肪細胞に直接的に働きかける、即効的なメタボ対策になると考えられます。
では、内臓脂肪細胞に直接的に働きかけるには、どうすればいいのでしょうか。
ここで、ヒトの栄養吸収メカニズムについて説明しましょう。このメカニズムの中に体質改善のヒントがあります。

口→胃→小腸へ到達した消化物中の栄養成分は、消化酵素や腸内細菌によって分解されて、腸管から吸収され、腸間膜という膜を経て各組織に入ります。
チョーカンマク…皆さんは初めて聞く名前でしょう。
例えば、食品として消化されて腸から吸収される糖やアミノ酸など水溶性の消化物は、腸間膜→血管系 → 門脈 → 肝臓というルートをたどります。
一方、脂質など油性の成分は、小腸で脂肪酸に分解された後、腸管を通りカイロミクロンという血液中に分散できる形に変化して、リンパ管を経て心臓の近くの胸管から全身の血液に合流します。
ここまでの説明で登場する主役の腸間膜脂肪細胞は、上図のように腸間膜の上にある脂肪で、具体的にはこの脂肪が増えすぎる事が、メタボを引き起こす原因なのです。
つまり、私たちがメタボと闘うべき「主戦場」は、腸間膜脂肪細胞を含む腸管組織であり、ここの機能回復がメタボ回復の勝因となるのです。

内臓脂肪の貯蓄

■腸管組織の機能回復とはどういうことか
メタボ王国アメリカでは、肥満を解消するために腸間膜脂肪を手術で取り去ってしまう、という荒っぽい方法も実践されているそうです。
もっとも、これは過食症や極度の肥満など、いくつかの病気が重なった場合の最終手段らしいのですが、腸間膜脂肪細胞を一定程度取り除くと、当然、体重も劇的に変化するようです。
エネルギー貯蔵場所を減らす結果になるので、切除部位や量などが問題になるでしょう。そんな荒療治をしなくても、薬で内臓脂肪を減らせないものか…と思いますよね。
残念ながら、内臓脂肪の分解をターゲットにした医薬品は今のところありません。
ましてや、メタボの主原因である内臓脂肪の蓄積抑制、アディポネクチン産生アップに効果があるような特定保健用食品は、いまだありません。
唯一、食後の血中の中性脂肪の上昇を抑えるとうたっている各種のお茶が、各メーカからも発売されているようです。効果のほどは疑問ですが。

ですが、もともとメタボは主に食事などの生活習慣の変化によって発症した現代病なのですから、逆に食品で予防できる可能性は十分に考えられるのです。
もちろん、最初に書いたように欧米型の食事をあらためるだけでも、かなりの予防効果はあると思います。
しかし、何度も言うように、いったん機能不全に陥ってしまった脂肪細胞は、ちょっとやそっとでは元に戻りません。ならばと、見方を変えてみました。

メタボを、内臓脂肪を含めた腸管組織の機能低下としてとらえた場合、腸管内ではどのような事が起こっているのでしょうか。
正常でない大きさまで腸間膜脂肪細胞が大きくなってしまった時、それを小さくしようという力も腸管内で働いているのではないか、と考えたのです。
人間の体を本来あるべき状態に戻そうとする働き。
恒常性を保とうとする働き、これも免疫力と呼ぶことができます。
腸と免疫というキーワードから最初に思い浮かぶ言葉は…

 『腸内細菌』

腸内細菌は、腸内の機能維持を行っているだけでなく、人間の免疫力そのものに大きな影響を与えている存在です。
腸の中にすむ腸内細菌の数は、数百類以上、数百兆匹以上とも言われます。
それほど多くの腸内細菌は腸の中で、私たちが食べた消化物を分解し、自分で分泌した代謝物と呼ばれる成分を媒体として、腸管の壁の向こう側にある免疫細胞に影響を与えています。
腸間膜脂肪細胞が増加していく際には、その前に必ず腸内細菌によって、脂肪が増える原因となる食品が消化(菌の場合は資化と言います)されていますので、腸内細菌は最初に脂肪細胞の『異常に気がつく』生き証人(?)かもしれません。
もし、腸間膜脂肪細胞が異常に増殖していく状況に対して、腸内細菌が何か反応するとしたら(具体的には脂肪細胞を減らそうとする)、それは代謝物という形のシグナル(信号)が最も有効な方法です。

そこで次に私たちが行った実験は、腸内細菌の力を借りてアディポネクチンの分泌を促進すること。これが、最も効果が高い3つ目の選択肢なのです。

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