サプリメントの思い込み
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乳酸菌のCMが生み出す11の神話では、芸能人や有名人によるCM戦略で、 現実と異なる様々な情報が、いつの間にかバイアスとして皆さんのマインドに刷り込まれるという話をしました。
本稿「サプリメントの思い込み」も同様に、『○○に効果があるサプリメント」について、注意すべき点を紹介したいと思います。
グルコサミンやコンドロイチンなど骨を構成する成分を含み、骨粗鬆症を予防する効果がありそうなイメージでCMを展開している某メーカーがあります。
その会社はサプリメントの宣伝を行う際に、『飲むことと吸収されることは違う』と、わざわざ成分の吸収について差別化したとされる宣伝を行っています。
それはその通りであり、確かに私たちの体のメカニズムとしても、口から取り入れた各種の栄養素の全てが消化吸収される訳ではありません。
どのくらいの栄養素が吸収されるかといえば、それは消化器官の能力の問題であったり、年齢や個人により様々です。
また食品に限らず、口から入ってくるもの全てが体に有益なものとは限りませんので、それらを振り分けるような仕組み(免疫機能)も、私たちに備わっています。
飲むことイコール吸収されることでないことは、誰でも分かる当然のことですが、これが有名メーカーの宣伝となると話が変わってきます。
例えば骨と骨の隙間に存在する成分であるコンドロイチンが、サプリメントとなってお求めやすくなりました。と宣伝されれば、何かそのサプリを飲むと関節がスムースに動いたり、 老化が防止できるようなイメージを持つのではないでしょうか。
実際、コンドロイチンはアミノ酸の集合体であるタンパク質ですので、体内の消化器官で分解された場合はいくつかのアミノ酸に分解されます。
つまり、コンドロイチンをなんらかの形で摂取したとしても、コンドロイチンの形で吸収されて、間接に送り届けられる事はありません。 美容の世界でも同様のことが言えます。 皮膚を構成するコラーゲンを摂取すれば、お肌が瑞々しくなり若返る・・・というような宣伝に基づいて、様々なコラーゲンを原料としたサプリメントが販売されています。
コラーゲンもタンパク質ですので、体内に入れば消化器で分解されてアミノ酸となって各部の構成要素となる、あるいは栄養源となる事はあっても、必ずしもお肌に還元されるとは言えません。
このように、口から入れるイコール吸収されるではないということが一般的になってきたことで、このメーカーはそれを逆手に取り、さらに新しい宣伝を考えたようです。
『口から入れても吸収されるとは限らない』というフレーズです。
当社のサプリはからず吸収されますよ、というメッセージを込めたわけです。
実際は、口から入れても吸収されるとは限りませんし、『分解され吸収されても体内で利用されるとは限らない』のです。もちろん、ここまで本当のことを言ってしまうと、この製品は売れなくなってしまうので言うはずはありませんが。
同様に、『胃酸に負けずに腸まで届く乳酸菌』や『腸に長く残る乳酸菌』などという商品があります。
前者は乳酸菌をカプセルに詰め込んだり、たくさんのライブラリーの中から低いPHでの生存率が高い菌を選んで製品化したり、あるいは漬物に使用される菌などで、 既存の腸内菌に排泄されにくい菌(鳴かず飛ばず)を選んで製品化したものでしょう。
胃酸に強い菌が高い機能性を持つとは限りませんし、腸内に長く留まることと、腸管免疫系に働きかける機能が高いとは限りません。
もちろん、薬事法などの関係でそのような機能性の標榜ができないのですが、飲むことと吸収されることが違う以上に、吸収された成分が作用することはまた別の次元の問題だと認識すべきです。