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乳酸菌と音楽

酒づくりの現場では古くから、酒蔵の中で仕込み中の日本酒や焼酎の原料に音楽を聴かせることで、円やかなお酒が出来上がることが知られています。
愛知県の某酒造メーカーでは比較的大きめの音量で音楽を、大型のコーンで発酵が行われている樽に誘導しているそうです。
奄美大島の黒糖焼酎の製造でも、黒糖焼酎の製造工程において、貯蔵タンクに一定の音響振動を加えて熟成を促すという独自製法が行われており、音響熟成という名称で呼ばれているようです。
しかし、科学的な根拠に基づいて、どのような曲をどのタイミングでどのくらいの時間、醸造過程の日本酒に聴かせれば良いのか、などの科学的なデータは見当たらず、先人の教えに従った古典的、伝承的な手法として 行われている場合がほとんどのようです。

科学的な手法で証明されているか否かは不明ですが、私が知る限り唯一と思われる根拠がありますのでご紹介します。
その根拠とは、音楽という形で行われるある周波数での空気の振動が培地に伝わり、培地が振動することによって、発酵中の(主に)乳酸菌が、培地である醪(もろみ)と接触する面積が増え、発酵が進むという考え方です。
確かに、さきの黒糖焼酎の場合も、発行タンクの外面にたくさんのスピーカーを貼り付けるように配置し、音響による振動が発酵中の醪に伝わるように配慮されています。
私たちが発酵の実験を行う際などに、発酵溶液中にマグネットを入れておき、外部からの磁力でクルクル回転させ、発酵状態を均一化するという方法がよく行われます。この理屈と同じなの かもしれません。
樽にプロペラを入れて回転させれば効果は同じなのかもしれませんが、音楽を聴かせているという意外な方法によって、何か微生物の神秘的な世界に踏み込んだような気がしますね。
この、培地を振動させるという理屈から言えば、大きな振動が必要ですので、インキュベータの中に小さなスピーカーを入れてモーツアルトのCDを菌に聴かせても意味はない事になります。

筆者は時々、インキュベータの外で発酵作業中の乳酸菌たちに聞かせるつもりでリコーダーを吹いていますが、これも実際は非科学的な作業で、ただの自己満足にすぎなかった、というわけです。

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