腸と免疫の関係
腸内細菌やラクトザイムの話をする前に、まず私たちに備わっている防衛機能の説明をします。
私たちの体には病気を治す自己防衛システムとして、免疫系のシステムが備わっています。
免疫系は大きく分けて、一次免疫系と二次免疫系に分かれています。 一次免疫系の器官は骨髄と胸腺で、骨髄はすべての血球(赤血球・白血球・血小板)などのパーツを作る働きをします。 二次免疫系の器官としては、脾臓、肝臓、体の各所にあるリンパ組織、そして骨髄です。
自己防衛システムでは、まず血液中の白血球が戦闘部隊として働きます。白血球は、マクロファージ、顆粒球、リンパ球の3種類の細胞で構成されています。陸海空の軍隊のようですね。 マクロファージと顆粒球は細菌などのサイズが大きな異物を捕らえ、リンパ球は細菌やウィルスなどのサイズの小さな異物を処理していきます。
リンパの組織は免疫システムの最前線で、異物が侵入しやすい場所に集まり待機していて、マクロファージからの出動指令を受けて細胞分裂し、数を増やして異物を攻撃します。 その際に、一部の賢いリンパ球は攻撃した異物に関する情報を記憶していて、再び同じ異物が侵入したときには、マクロファージの指令を待たずに細胞分裂を開始して、病気を早く治します。
このリンパ球の働きが、一般的に免疫と呼ばれるものです。
そして体内でリンパ球を作ったり、リンパ球が異物の侵入に備えて待機したりしている場所を免疫組織といい、そのもっとも発達した免疫組織が腸管です。
腸は、生命維持に不可欠な栄養分を摂取する器官ですが、実は母の体内で受精卵が分裂して臓器をつくりあげる発生プロセスの中で、最初に出来あがる臓器です。
これは、腸が最初に作られなくてはならない理由があるからなのです。
年齢と免疫
口から腸管に至る消化管は外界の異物に接しやすい場所で、腸管には病原体となる食べ物の中のウィルスや、消化酵素で分解された異種たんぱくなどが取り込まれます。中でも最も異物が侵入しやすい場所は、食物を吸収する小腸です。
小腸の粘膜を広げると、実に皮膚の200倍もの面積があり、小腸を中心とする腸管の周りは、体中のリンパ組織の6~7割のリンパ球が取り巻いています。
小腸のリンパ組織では、抗体が作られたり、リンパ球が活性化されたりします。 その活性化されたリンパ球は腸内だけにとどまらず、全身のリンパ球を活性化し、その一部は腸管リンパ組織に戻ってくるのです。
出生直後から成人するまでの若年期には、外からの異物の攻撃を得意とする免疫システムが活発に働きます。
しかし、その中で主な働きをする胸腺は20歳頃をピークに萎縮しはじめ、40歳ごろには四分の一くらいになってしまいます。
ガン細胞を始めとする異常細胞は加齢と共に沢山作られるようになると言われますが、ちょうどこの頃が、ガン年齢に当たるわけです。
そして、80歳ぐらいになると胸腺は痕跡しかなくなり、免疫系からいうと寿命を迎えるわけですが、実際は体の免疫システムは腸管リンパ組織へとシフトして働き続けることになります。 リンパ球は体外からの異物だけでなく、ガン細胞のような体内で発生した異常な細胞や、老廃物の排除にも働いています。
実際、昔に比べて衛生状態が良くなっている現代人は、体内の異常によって作り出される病気の方が圧倒的に多くなっています。
腸管免疫とT細胞
腸管の粘膜では、実際にリンパ球も作り出されています。リンパ球にはT細胞とB細胞の二つの大きな系統があり、T細胞は胸腺以外にも腸管粘膜及び肝臓で作られます。
さらにT細胞は外界からの異物に対抗するもの、ガン細胞など体の内部で発生するものなどに分類されます。
このうち体内の異常細胞に対抗するT細胞は腸管付近に特に多く、他の免疫組織にはほとんど認められません。
病気の発症や治癒に最も大きく影響するのは、やはり腸管なのです。
若年者でも、腸管免疫が弱いと異種タンパクによる食餌性アレルギーを発生しやすくなりますが、中高年者になると、健康状態は腸管の免疫力によって支えられている部分が大きいといえます。
小腸のリンパ組織では、抗体が作られたりリンパ球が活性化されたりと書きましたが、ラクトザイムはここに大きく関わっていると考えられています。
我々が食物として摂った食物は、やがて消化物から酵素によって分解され、栄養素として腸管から吸収されますが、それらはまた腸管に存在する腸内細菌の栄養源ともなります。
100種、数百兆とも言われる腸内細菌が代謝(生産)した代謝物は、腸管を経て免疫組織に対し影響を与えると考えられます。
体中のリンパ組織の6~7割のリンパ球が集まる腸管の免疫組織で繰り広げられる免疫のドラマは、全身のリンパ球を活性化する無限連鎖とも考えられます。