雷と免疫力
一見、何のつながりもなさそうなタイトルですが、実は関係大ありです。子供の頃に、雷が鳴っている時はオヘソを隠しなさいと言われた方が多いと思います。「どうして?」と聞いたときに、昭和時代のお父さんお母さんは何と答えたでしょうか。「カミナリ様にオヘソをとられるからだよ」これは、雷が鳴る季節とも関連があります。オヘソはもちろんお腹にあり、お腹の中には腸があります。
腸は、温度が下がると働きが低下することが知られていますが、腸の中に息(す)む腸内細菌も、通常は体温と同じ35〜38度前後の温度を最も好んで増殖し、消化酵素もまたこの温度でもっとも良く消化物を分解してくれます。このように生き物、特に微生物が最も好む温度を至適(してき)温度と言います。もし、雷が鳴っているような気温の低い雨の日の夜に、オヘソを出したまま寝てお腹が冷えてしまうと、腸の温度は至適温度から下がってしまう可能性があります。腸内細菌は活動が低下し、消化不良を起こすだけでなく、免疫機構が生み出すリンパ球などの数が減るなど、腸管免疫系の重要な機能に影響を与えることが、これまでの説明で容易に想像できると思います。
また、雷が鳴ることが多い夏は気温が高く雑菌が繁殖しやすい季節です。食中毒が多い時期は、免疫力の低下が二重のトラブルにつながる可能性が高い季節でもあります。免疫力の低下は、カミナリ様にオヘソをとられるくらい、大変な事になるという、昔の人たちの経験則に基づいた教訓なのではないでしょうか。こういった理屈が完全に正しいか正しくないかではなく、一つ一つの事象に疑問を持って、科学的に考えていく癖をつけましょう。