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腸内フローラと短鎖脂肪酸

腸管は消化器官であるとともに生体で最大の免疫系組織ですが、消化管には数千種、数100兆個の腸内細菌が排除されずに,腸内フローラを形成して私たち宿主と共生状態を続けています。
近年、腸内フローラを構成する腸内細菌が代謝する成分が、様々な影響を生体に及ぼすことが明らかにされてきました。
宿主である私たちは腸内細菌に食事を通じて栄養を、また住むための環境を提供する一方で、腸内細菌はアミノ酸や炭水化物などの栄養素や胆汁酸などを代謝て提供したり、 短鎖脂肪酸などの生産物質の産生、ビタミンの合成、病原菌に対する感染防御,腸管上皮細胞や免疫細胞の分化や成熟化など、生体防御システムにも関与しています。

これらの機能の中でもアカデミックな話題として、腸内細菌は食物繊維を餌として産生する酢酸などの短鎖脂肪酸が着目されています。
今回は短鎖脂肪酸の様々な働きをまとめて紹介いたします。
まず脂質と脂肪酸についてご紹介致します。

脂肪酸とは何か

「糖質」や「たんぱく質」に並ぶ3大栄養素の一つに「脂質」があげられます。
一般に、「脂質」=「油っこい食べ物」=「体に悪い」というイメージがあるのではないでしょうか?
脂質と言っても、様々な物質の総称を指すもので、ギトギトした油だけとは限らず、必ずしも「健康に悪い」とは言えません。
以下、脂質を構成する主要な要素である「脂肪酸」について解説します。

脂肪酸は脂質の主な構成要素で、人の健康にとって欠かせない存在であり、次のような働きをします。
・ 細胞を動かすエネルギー源となる
・ 細胞膜、ホルモン、核膜などの原料となる
・ 皮下脂肪として寒さやショックから体を保護する
・ 脂溶性のビタミン(A・D・E・K)の吸収を促進する

短鎖脂肪酸

脂肪酸は大きく分けて図のような飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けれらますが、最近はこの他にも、ある種の不飽和脂肪酸をまとめてトランス脂肪酸と呼ぶことがあります。
血圧を下げる働きがあるなどとして販売されている亜麻仁油に含まれるαリノレン酸は、長鎖脂肪酸に分類されます。
飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸とも、どちらが体に良いか悪いかなどという短絡的な捉え方をせず、正しい知識に基づいて的殺な量で食品を摂っていただければ良いと思います。
また、別章で述べている 脂肪細胞につきましては、私たちの体内に実際に存在し、健康に大きく関わる重要なパーツですので、是非ともお読みください。
当社が重要視しているのは、飽和脂肪酸の中でも免疫機能に重要な働きを持つ短鎖脂肪酸です。

短鎖脂肪酸の働き

短鎖脂肪酸は、図のように自然界に存在する脂肪酸ですが、近年特に注目されているのが、ヒトの大腸において、消化されにくい食物繊維やオリゴ糖を栄養素として腸内細菌が発酵することにより生成される、酢酸・プロピオン酸・酪酸などです。
短鎖脂肪酸には腸内を弱酸性の環境にして有害な菌の増殖を抑制したり、大腸の粘膜を刺激して蠕動運動を促進する、といった消化吸収に関する働きの他に、ヒトの免疫反応を制御するなど様々な機能があることが知られるようになりました。

短鎖脂肪酸の免疫機能

特に、腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸などの生産物質は、宿主の免疫応答に重要です。
食物繊維を発酵して産生する短鎖脂肪酸のうち、酪酸が制御性T細胞の誘導に重要であることが報告されており、酪酸などの短鎖脂肪酸は上皮細胞のエネルギー源として重要であるばかりではなく、腸管上皮細胞透過性の抑制・ムチンや抗菌ペプチド産生の亢進 上皮細胞からの炎症性サイトカイン産生抑制作用も有していることが報告されています。




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