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腸内細菌は免疫機能のコンダクター(指揮者)

腸が消化器官として果たす役割については、すでに一般的になっていると思います。
口から入った食物が胃や十二指腸を経て消化物として腸に到達し、養分や水分が吸収されて便として排泄される・・・と、ここまでは誰でも知っている働きでしょう。 しかし、腸内細菌と免疫との関係となると、なかなか簡単には理解されない領域だと思います。

腸内環境はオーケストラ

腸内細菌とは

私が腸内細菌の世界を説明する際に、よくオーケストラに例えて話をしています。
たくさんの種類の乳酸菌をそれぞれの楽器の奏者に例え、彼らが生息している腸内はまるで広いコンサートホールです。 オーケストラではコンダクター(指揮者)は一人ですが、腸内菌の場合は独立した菌のコロニー(集落)が全体でタクト(指揮棒)を握っています。
観客は免疫に関わっている細胞などで、良い音色を聴くと免疫力が上がって大満足で帰っていきます。
長年、仲良く同じメンバーで調和を保って演奏してきた楽団の仲間たちは、誰がどんな音色を奏でるか、自分の楽器の音のよう熟知しています。
何十年も演奏活動を続けるうちに楽団員もみな年をとっていき、若い頃のような美しい音色で楽器を奏でることができなくなっていきます。
聞いている観客も、「昔はもっと良い音色だったのになぁ」などと思いながら満足しないながらも、他にコンサートホールがないので、毎日、仕方なく聴いています。
そこへある時、ピカピカの楽器を抱えた新人の若者が加わることになりました。
想像してみてください。
何十年も同じ仲間同士で音を紡いできた仲間の中に、顔も見た事のない、若い子が入ってきたのですから、とてもウエルカムな感情にはならないでしょう。早速、嫌がらせが始まります。
若い奏者は一生懸命、観客に良い音を聴かせようとするのですが、他の奏者はタイミングをずらしたり、肘でつついたり・・・
結局、若い奏者は居場所がなくなって楽団から脱退することになります。
新しい奏者が来るたびに同じことが繰り返され、観客も若い奏者に期待しなくなってきます。
これと同じことが、私たちの腸内でも起こっていると考えると、理解しやすいと思います。

観客を満足させるには

自分の菌であれ外から送り込んだ菌であれ、そもそも善玉菌を増やす目的の一つは、菌そのものが腸壁に接触する機会が増えることで、菌が直接的に免疫細胞を刺激して免疫機能を活性化させることにあります。
しかし前述の通り、若い頃は元気だった自分自身の善玉菌は年齢とともに数も活性度も低下していきますので、食品として外から送り込んだ善玉菌によって免疫機能を刺激しよう、というのが乳酸菌メーカーの発想です。
当ホームページで紹介しているもう一つの方法は、腸内細菌の仕事のほとんどを担っている、菌の代謝物(生産物質)を利用して免疫機能を活性化するという方法です。
前述のオーケストラの話を例にとれば、歳を取りよそ者を受け付けなくなった楽団のクオリティを上げるために、コンサートの際に観客には内緒で、楽団員が若い頃に演奏した当時の音色の、CDに録音した物を流してしまう、という方法です。
聴いている観客はその曲が、目の前の楽団員が演奏したものか、同時に流された録音かを聞き分けることはできないので、大満足で帰っていく、という仕組みです。

免疫機能の指揮者


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